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クラウド利用促進機構(CUPA) - CUPA...

Date post: 28-May-2020
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1 2014 年 6 月号 目次 コラム-1:林雅之 「2020 年に IoT(Internet of Things)の普及でつながるデバイスと市場の成長性」 コラム-2 :森洋一 「オブジェクトストレージ、プライベートで効果的な運用2態」 コラム-3:新野淳一 「急速に注目度が高まるコンテナ型仮想化と Docker」 事務局後記 CUPA Café 開催案内 CUPA 会員企業紹介 CUPA レポート 2014 年 6 月号 VOL,23 【開催案内】 主催:一般社団法人クラウド利用促進機構 日刊工業新聞社 会期:2014 年 6 月 18 日(水)~ 20 日(金) 会場:東京ビッグサイト 東ホール お問合せ先:下記の Cloud Show Japan 事務局へお願い致します HP:http://www.cloudshow.jp/ e-mail:[email protected] 【クラウド・イベント情報は下記の URL となります】 http://cloud.or.jp/event_calendar.html
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2014年 6月号

目次

コラム-1:林雅之

「2020 年に IoT(Internet of Things)の普及でつながるデバイスと市場の成長性」

コラム-2 :森洋一

「オブジェクトストレージ、プライベートで効果的な運用2態」

コラム-3:新野淳一

「急速に注目度が高まるコンテナ型仮想化と Docker」

事務局後記

CUPA Café 開催案内

CUPA 会員企業紹介

CUPAレポート

2014 年 6 月号 VOL,23

【開催案内】

主催:一般社団法人クラウド利用促進機構 日刊工業新聞社

会期:2014 年 6 月 18 日(水)~ 20 日(金)

会場:東京ビッグサイト 東ホール

お問合せ先:下記の Cloud Show Japan 事務局へお願い致します

HP:http://www.cloudshow.jp/

e-mail:[email protected]

【クラウド・イベント情報は下記の URLとなります】

http://cloud.or.jp/event_calendar.html

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「2020年に IoT(Internet of Things)の普及でつながるデバイスと 市場の成長性」

CUPA総合アドバイザー 林 雅之

IoT(Internet of Things)の普及に伴い、事業者各社が IoT でつながるデバイス数と市場の成長

性を明示しています。特に注目すべきは一つの節目となる 2020 年です。事業者各社の 2020 年を

イメージした IoT に関わる発表内容や市場の成長性を整理してみたいと思います。

ガートナー

米調査会社のガートナーは、2009 年時点でインターネットにつながっていたモノの数はおおよそ

25 億個で、そのほとんどは、PC やスマートフォン、タブレット端末といったデバイスですが、

2020 年には、IoT の普及は急速に進み、2020年には 300億個以上のデバイスがつながり、コン

ピュータ以外のデバイスが過半数を占め、1 兆 9000 億ドル(約 194 兆円)の経済価値を創出する

と予測しています。

□インテル

インテルは、IoT の普及により、2020年には確実に 500億のデバイスがインターネットに接続

されると予測しています。その多くは、PC やスマートフォン、タブレットといった人が使うデバ

イスではなく、自動車や自動販売機、工場設置機器、医療機器などのデバイスがつながり、これら

のデバイスにつながるデータを活用したビジネス展開が鍵になるとしています。

□シスコシステムズ

シスコシステムズは、2013 年現在で、IoT によりつながるデバイスは 100 億近くまで増加し、

2020年には 500億台のデバイスがつながり、インターネットは、人、プロセス、データ、モノ

を組み合わせた IoE(Internet of Everything)の時代へと大きく成長し、今後 10 年間で IoT は

全世界に 14.4 兆ドルの価値を生み、日本はそのうちの少なくとも 5%を占め、国内に 76.1 兆円の

新市場が生まれると予測しています。

さらに、シスコでは、IoE の普及に伴い、2012 年から 2017 年に全世界の IP トラフィックは 3 倍

に増加し、モバイルトラフィックは今後 5 年間で 13 倍にも膨れ上がると予測しています。シスコ

では、デバイスから生成されるデータをネットワークが介してデータセンタ-で処理するクラウド

のアーキテクチャーは、IoE の時代にはボトルネックに突き当たるとし、IoE 時代にクラウドを最

適化しアーキテクチャーを拡張化した分散型の新たなエッジコンピューティングモデルとして、

「フォグコンピューティング」を提唱しています。

□マイクロソフト

日本マイクロソフトは 2014 年 5 月 29 日、東京都内で開発者向けカンファレンス「de:code」を

開催し、後半の基調講演では、日本マイクロソフト 執行役 デベロッパー&プラットフォーム統括

本部長の伊藤かつら氏は、デバイスの数とデータの量が爆発的に増加し、2008 年に世界に存在し

ていたデバイスは世界人口と同じ 70 億個程度だったのに対し、2020年には 10兆個になるとの

予測をコメントしています。

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□IDC

米調査会社の IDC は、2012 年に約 4 兆 8000 億ドルだった IoT の世界市場規模が、2020 年には

約 8 兆 9000 億ドルになり、2020年までに自律的に接続されるデバイスのエンドポイントは

300億台になると予測しています。

また、IoT の本格的普及に伴い、デジタルデータの総量も急激に増加が予想されます。調査会社の

米 IDC によると 2020 年にはデジタルデータの容量は 40 ゼッタバイトに達すると予測しています。

IoT 普及で成長が見込まれるのが、家電やデバイス領域で統合製品によるサービス提供などが予想

される「コネクティッドホーム」、「コネクティッドカー」、「ヘルスケア」などでの分野での利

用による新たなビジネスモデルの創出が期待されています。

IoT で接続されるデバイスは数百億規模にも上り、たとえば、自動運転車であれば毎時 3.6TB、ジ

ェットエンジンであれば毎時 20TB のデータが生成されるように、日々加速度的に蓄積されるデー

タは増加し、それらの膨大なデータを収集・蓄積するための基盤となるクラウドサービス市場の成

長性も期待されるところです。

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コラム 2「オブジェクトストレージ、プライベートで効果的な運用2態」

CUPA総合アドバイザー 森 洋一

Web 時代にオブジェクトストレージは欠かせない。

AWS S3 や Google Cloud Storage、Microsoft Azure Storage などパブリックなものが有名だが、

企業向けのプライベート利用には運用管理システムがポイントだ。そこで本項ではストレージと運

用管理をセットで提供する SwiftStack と Basho について解説する。

1) OpenStack Swiftを使いこなす、SwiftStack ! まず OpenStack Swift(以下、Swift)を使ったプライベートクラウドストレージの普及を目指す

SwiftStack。Swift はオブジェクトストレージとして最も普及が進んでいるもののひとつだ。周知

のように、OpenStack はシリコンバレーの NASA Ames と RackSpace が共同でスタートさせた

画期的なプロジェクトである。主な構成要素は Compute エンジンとなる NASA Nebula の Nova、

そして Swift の原型となったのは RackSpace の Cloud Files だった。共にプロジェクトに寄贈さ

れたものである。世界中で利用が進む OpenStack の中でも、Swift は単独導入が出来る。

SwiftStack はここに目を付け、その普及のための鍵となるプロダクトを開発した。

=念のため、Swiftとは=

念のため、Swift について纏めておこう。

Swift は AWS S3 や RackSpace Cloud Files 互換の REST API でアクセスする。その構成はまず、

①ユーザからのアクセスを振り分ける Proxy Server と ②ユーザ認証の Authentication Server。

Proxy はユーザ認証後、必要に応じて Account/Container/Object の Server と連携する。③

Account Server はユーザ情報と関連するコンテナのマッピングを行い、④Container Server はオ

ブジェクトのリストを保持し、⑤実際のオブジェクトは複数ある Object Server に分散保存される。

分散配置の仕組みを理解するポイントは Ring と Zone だ。Ring はアカウント毎に P 個(Default

は 32)のパーティションに分割し、オブジェクトのハッシュ値を計算して、どの Object Server

に配置するかを決める。この際、保存オブジェクトは3つ(Default)の複製が作られる。もうひ

とつのポイントの Zone は Object Server をラックや電源系統、できれば地理的に分離させて複製

を置くもので、これによって障害対策を確実にする。

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=RackSpaceという会社=

OpenStack の言い出しっぺの RackSpace とはどんなスタートアップだろう。

一言で云えば、とても先見性のある会社だ。1996 年、ISP として創業した当時の社名は Cymitar

Network Systems だった。その後 1998 年、ホスティングも手がけるようになって現社名

RackSpace Hosting に変更。創業者の Richard Yoo 氏は時代を読んでいた。これからは単なる企

業アプリケーションのホスティングだけではなく、映像や音楽などのストリーミングが重要となる。

そして 2002 年、社内のグループをスピンアウトさせたのが ServerBeach (現 Peer1 傘下)だ。

時代は彼の読みどおりに推移し、2005 年、YouTube が登場した。この設立 2 年に満たない急成

長スタートアップを Google が$1.65B(1,650 億円)で買収した話はあまりに有名だが、

ServerBeach がビデオホスティングを担当していたことは知られていない。つまり、この時代か

ら RackSpace はオブジェクトストレージの重要性を認識して、開発を進めていたのである。

Amazon Web Services が登場した 2006 年、同社も初期の実験クラウドサービス Mosso をスタ

ートさせた。ここで使われていたのが Cloud Files だ。そして時代が進み、2010 年 7 月 19 日、

NASA Ames と共に OpenStack をスタートさせた。この発表後、すぐに社内の精鋭エンジニアが

集められ Swift の開発が始まった。このチームの PTL(Project Technical Lead)が John

Dickinson 氏である。

=SwiftStackとは何か=

SwiftStack の創業は 2011 年。創業者は CEO の

Joe Amold 氏を中心に COO の Anders

Tjernlund 氏、アーキテクトの Darrell Bishop 氏

の 3 人だ。2012 年 6 月、RackSpace から待望の

John Dickinson 氏がやってきた。

年の若い John の肩書きは Director of Technology だが実質は CTO、そして Swift を熟知した同

社の表看板である。彼らの製品は Swift を使い易くし、広めることである。Swift 自体はいじらな

い。それは OpenStack の仕事だからだ。SwiftStack は Web インターフェースで Swift ノードの

プロビジョニングや運用・管理機能を提供し、必要があればトレーニングやサポートも提供する。

開発した製品の主なコンポーネントは2つ。前述のように Swift のストレージは複数の Object

Server(以下、ノード)から構成される。それらにインストールするのが SwiftStack Runtime

(下図右)、もうひとつはこれらノードの Runetime を制御する SwiftStack Controller(下図左)

だ。まず、出来れば占有できるサーバーにこの Controller をインストールし、次に Object Server

のノードには Red Hat/CentOS/Ubuntu のどれかを用意して SwiftStack のコマンドセットをダウ

ンロードする。これを実行すれば、そのノードには自動的に最新版の Swift と SwiftStack

Runetime のインストールが始まる。

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インストールが済んで、使い始めて解る最大の特徴は、パーフェクトなコンソール機能である。

OpenStack 自身にもダッシュボードはあるが、これは OpenStack 全体を見るためのものだ。正確

なストレージノードの運用管理には詳細な情報が欠かせない。マルチノード構成の利用状況(アク

セス/負荷)、障害対策のためのアラートやトラブル対応、各種システム統計、キャパシティープ

ランニング用レポートなど、これら全てがリアルタイムでビジュアル表示される。これらの情報は

ストレージノード側にインストールされた Runtime から送られたものだ。各ノードには

Monitoring Agent が搭載され、これがノード側の詳細情報を収集してコントローラに送り出す。

またノードには LDAP と連携した認証や負荷分散のための Load Blancer も搭載されている。

SwiftStack のコンソールは、通常オンプレミスとして利用されるが、必要があれば、Firewall の

外側で彼らがホスティングすることも可能である。

以上見てきたように、SwiftStack を利用すれば、Swift を使いこなし、プライベートなクラウドス

トレージの完全で容易な構築と運用が出来る。現代は Web アプリケーションが全盛の時代。そし

てクラウドの普及と相まって、そのコンテンツを保存するオブジェクトストレージの需要は高い。

彼らの狙いはエンタープライズ市場である。

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2) Bashoの Riakとは何か?

次に取り上げるのは、風変わりな名前のスタートアップ Basho

Technologies。この名前は創業者のひとりが俳句に造詣が深く、それで芭蕉

(Basho)にしたと聞く。ちなみに Haiku は今やそのまま英語としてで通じ

るほど人気は高い。クラウドの世界でも、Hero(ヒーロー)と Haiku(俳句)

をもじった Heroku という社名のプロバイダがあるし、前 Sun CEO だった

Jonathoan Shuwartz 氏も英語の俳句を作っていた。さて Basho だが、

2008 年、同じボストンに本拠をもつ Akamai のエンジニア達が興した会社

である。彼らが試みたのは Amazon が出した Dynamo に関する論文の製品

化だ。目指すはエンタープライズには欠かせない耐障害性と無停止運転であ

る。

=4つの Riak製品=

Basho の開発したオブジェクトストレージが Riak である。

Basho の開発チームは Riak を分散環境に適合させて、その上で

高信頼データベース化を追及した。彼らの製品は4つある。まず、

元祖オープンソースの Riak。勿論、無償で利用でき、1クラスタ

構成となる。ここで言うクラスタ(後述)とは1つのデータセンタと考えても良い。次に有償版の

Riak Enterprise。これにはマルチクラスタ間(マルチデータセンタ間)のレプリケーション構築

と 24x7 のサポートサービスが付いている。この異なるセンタ(クラスタ)間でのレプリケーショ

ンは高可用性を追求する Raik の大きな特徴だ。さらに、AWS S3 互換の Riak をベースとした

Riak CS(Cloud Storage)。これにも無償シングルクラスタ版と前述のマルチ機能(レプリケー

ション)でサポート付きの有償版(Riak CS Enterprise)がある。この Riak CS を利用すれば、

S3 で作られたアプリケーションの移行が出来るし、同じインターフェースのオンプレミスやクラ

ウドアプリケーションを作ることも可能だ。CS はまた、マルチテナントでもあるため、プロバイ

ダーや大企業での採用が多い。

=Riakの仕組み=

さて、基本となる Riak の仕組みを見ていこう。まず Riak は分散システムだと述べた。このランタ

イムは配備された幾つかのサーバーの Erlang/OTP で稼動する。これらサーバーのひとつひとつを

ノードと言い、複数ノードからなるクラスタが Riak データベースを構成する。クラスタ内では各

ノードは平等な P2P の関係にあり、新たにノードを参加されることも容易だ。蛇足だが、並列処

理言語 Erlang は開発元のエリクソン社の Ericsson Language が名前の由来だが、実際は、並列

計算処理で重要な待ち行列理論の数学者 Agner Erlang にちなんだものらしい。OTP はエリクソン

社が電話交換機用に開発した分散環境のプラットフォームで、耐障害性や無停止運用に強い特性を

持つ。Riak のデータ構造をもう少し詳しく見よう。

Riak のデータ管理は Key-Value Store。個々の Key+Value からなるデータはバケットに入れられ、

分散環境の複数サーバー(クラスタ)のノードに保存される。バケットは Key を分類するための名

前空間で、Bucket/Key からハッシュ関数で計算して、分散保存するノードを決める。実際の構造

はもう少し細かく、各ノードは仮想ノード(vnode)に分割されて、ハッシュ値から vnode が決

められる。vnode はさらに複数の Partition に分けられており、分散をより確かなものにしている。

次頁図の Ring では 160bit のハッシュ空間を P=32 個の Partition で分け、同数の vnode で配分

している。この例では物理ノードは4つだ。

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=実際の I/Oと障害対策=

実際の読み書きはどうなるのだろうか。

書き込み(Put)は、障害対策のため、異なる物理ノードの複数 vnode(Default=3)に複製され

る。そして複製が W 値(Default W=2)に達した時にアプリケーションに完了を返す。この例で

は 3 回の書き込み保存のうち 2 回が終われば成功だとみなす。読み込み(Get)も、事前に設定さ

れている R 値(Default=2)回の読み込みが出来るとアプリケーションにデータを戻す。このよう

に Riak は、データの自動複製、さらには障害 vnode の自動回避や自動復旧機能を用いながら、耐

障害性について、完璧な対応をしている。また DR など更なる障害対策のために、クラスター間で

リプリケーションを行うことも可能である。下図はノードから見ることが出来るクラスター管理コ

ンソールの画面例だ。ノードは親が無い P2P なので、どのノードからも同じ画面が見れる。

以上、見てきたように Riak は耐障害性と運用の容易性にこだわった製品である。

周知のように、AWS で提供される各種サービスは魅力的だが、一度それらを使って開発をすると、

他システムへの移行は難しい。つまり、AWS は便利だがベンダロックインの側面もある。その意

味で Riak および Riak CS の登場は、AWS の保守性をブレークスルーさせ、且つより高い信頼性

をユーザにもたらす可能性を秘めている。Riak は既に Fortune 50 の 25%に浸透していると聞く。

<雲になったコンピュータ>より編集転載

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コラム 3「急速に注目度が高まるコンテナ型仮想化と Docker」

CUPA総合アドバイザー 新野 淳一

クラウドの基盤技術の 1 つとして広く利用されているのが仮想化の技術です。現在使われている仮想化技術は一

般にハイパーバイザを用いて物理マシン上に仮想マシンを作りだすものです。

従来のこの仮想化技術に対して、最近急速に注目度を高めているのがコンテナ型仮想化技術です。代表的な実

装として Docker が挙げられます。

Docker の特徴は 2 つあります。1 つは軽量な仮想マシンとして扱えるため従来の仮想マシンよりも起動が非常に

速く、手軽に扱いやすいということ。もう 1 つは、従来の仮想化技術による仮想アプライアンスと同様に、アプリケーシ

ョンを軽量でポータブルなパッケージとして扱うことができる点です。

今月はこの Docker の動向について、見ていきましょう。

Dockerは軽量な VMに見える

下記の図は、Docker のWeb サイトに掲載されている仮想マシン(VM)による仮想化技術と、コンテナ型

仮想化技術を比較したものです。コンテナ型仮想化技術は OS上(Docker では Linux)に仮想的なユー

ザー空間を複数作り出すもので、またライブラリなどは共有されています。

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Publickey の記事「今からでも間に合う Docker の基礎。コンテナとは何か、Dockerfile とは何か。

Docker Meetup Tokyo #2」から、Docker の特徴をまとめると次のようになります。

コンテナとはハイレベルから見ると軽量 VM にみえます。プロセスが隔離されているし、ネットワークも独自に

振られていて、リソースも分離されているし root として実行できます。

ディスクにも書き込めますし、ログはすべて stdout/stderr/stdin に出てくるので、普通に見れば軽量

VM に見えます。

一方でコンテナをローレベルから見ると、chroot の強化版です。1 コンテナ=1 プロセスなので、ホスト OS

から ps コマンドを叩くと Docker 上で動いているプロセスがそのまま見えます。

カーネルをホストと共有していて、VM でも準仮想化でもなく、エミューレションはありません。また、Linux の

リソース制限のツール cgroups で、CPU やメモリなどのリソース制限ができます。

コンテナ型仮想化はこのように、従来の仮想マシンよりも軽量なのが大きな特徴です。一方で OS(カーネル)

の上で仮想化を実装するため、Docker での実装なら OS は Linux に固定されるなど、OS をあとから選択す

ることはできません。

6 月初旬には正式版が登場するか

Dockerは現在のところまだ開発途中の実装ですが、5月 7日に最初の Release Candidate(正式版候

補)となる「Docker 0.11」がリリースされました。そして、6月 9日と 10日の 2日間、サンフランシスコで

Docker のイベント「DockerCon 2014」が開催予定です。このタイミングで RC が登場したということは、この

「DockerCon 2014」の基調講演で正式版となる Docker 1.0 を華々しく発表、ということを目論んでいるの

ではないでしょうか。

Red hatは Dockerのための軽量 OS を開発中

Red Hat は 4 月に、Docker コンテナの運用に最適化した軽量な OS「Red Hat Enterprise Linux

Atomic Host」を、今年リリース予定の「Red Hat Enterprise Linux 7」と合わせてリリースすると発表して

います。

Red Hat Enterprise Linux Atomic Host は、Red Hat Enterprise Linux の派生 OS であるため、

Red Hat Enterprise Linux と同レベルの信頼性、セキュリティ、使い勝手などを備えつつ、Docker のコン

テナの実行や運用に絞って軽量化することでオーバーヘッドを小さく、さらにパッチなどの運用の手間を小さくする

としています。

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Red Hat Summit 2014のセッション「Application-centric packaging with Docker & Linux

containers」の資料から

Red Hat Enterprise Linux Atomic Host の開発は、「Project Atomic」と呼ばれるオープンソースプ

ロジェクトがベースになります。Project Atomic は、CentOS、Fedora、Red Hat Linux 横断のプロジェク

ト。

Red Hat は Docker の開発元である Docker.io との協業を深め、両社でコンテナの相互運用性などについ

て作業していくことも合わせて発表しています。

AWS Elastic Beanstalk が Docker をサポート

同じく 4月には、Amazon クラウドで PaaS機能を提供する AWS Elastic Beanstalk が Docker をサポ

ートすると発表されました。「AWS Elastic Beanstalk for Docker」です。Docker コンテナを AWS

Beanstalk によってデプロイ、監視し、ロードバランサーを使って、正常に稼働しているインスタンスにリクエストを

分散、スケーラブルな運用を実現してくれます。

Google Compute Engineが Dockerを積極対応へ

5 月 26 日、Google Compute Engine は、Docker に最適化された OS イメージをオープンプレビュー版

として提供開始しました。また、Docker のために開発されている CoreOS の正式にサポートを開始しました。

ドキュメント「Containers on Google Cloud Platform」によると、Google Compute Engine で提供

されるようになった「Container-optimized Google Compute Engine images」、コンテナ最適化イメ

ージは、主に以下の 3 つから構成されています。

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Debian 7

Docker ランタイム

コンテナ管理用のメタデータフレームワーク

Google Cloud Platform 担当のシニアスタッフソフトウェアエンジニア Joe Beda 氏が公開しているスライド

「Containers At Scale」によると、メタデータとは yaml ファイルでコンテナイメージなどを指定し、、これをノー

ドごとのコンテナマネージャが読み込んで Docker を管理することになるようです。

さらに今後、ユーザーインターフェイスで操作できるようにすることと、ロギング機能、動的なシステム構築のための

基本機能などが提供される予定と説明されています。

Docker開発元が Cloud Foundry Foundation に参加表明

5 月 30 日、コンテナ型仮想化ソフトウェア「Docker」の開発元である Docker は、オープンソースの PaaS

基盤ソフトウェアである「Cloud Foundry」の開発団体となる「Cloud Foundry Foundation」へ参加する

ことを発表しました。

Cloud Foundry は現在 Pivotal が管理しており、Cloud Foundry Foundation は来月にも Pivotal

から移管を受けて発足予定です。

Cloud Foundry の内部では、アプリケーションの実行基盤として独自のコンテナ技術である「Warden」(ウ

ォードン)が使われており、基本的には Docker はサポートされていません。

ただし、すでに Cloud Foundry で Docker をサポートする ActiveState の Stackato などの実装が存在

しており、また Cloud Foundry の内部で次期アプリケーション実行基盤となるべく開発されている Diego で

は、Warden 以外の技術にも対応しやすい構造になる見通しです。

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そして来月、6月 9日にはサンフランシスコで Docker のイベント「DockerCon」と、Cloud Foundry のイベ

ント「Cloud Foundry Summit Sunfrancisco」が歩いて 10分ほどの距離で同時に開催されます。

Docker はバージョン 1.0 の発表を行い、正式版となるはずです。同時に Cloud Foundry 対応の発表が行

われる可能性は高いでしょう。

Cloud Foundry のような PaaS が Docker に対応することで、あらかじめ PaaS が提供している Ruby や

Java といった実行系やフレームワークだけでなく、ユーザー自身で実行環境を PaaS に乗せることができるため、

PaaS の可能性が大きく広がります。

すでに Amazon クラウドの Elastic Beanstalk やレッドハットの OpenShift など、いくつかの PaaS が

Docker 対応を行っており、また Google Compute Engine でも対応が発表されました。いまの Docker

の注目度からすれば、今後さらに対応プラットフォームは広がるでしょう。

すでに Googleは全部のソフトウェアをコンテナに乗せている

このように、急速に注目され対応が広がる Docker ですが、すでに Google ではすべてをコンテナ型仮想化の上で

運用しているという驚くべき発表が行われています。

Google Cloud Platform 担当のシニアスタッフソフトウェアエンジニア Joe Beda 氏が公開したスライド

「Containers At Scale」には、「Everything at Google runs in a container」(Google では全

部をコンテナで実行している)と説明するページがあります。

Everything がわざわざ太字で強調されています。

つまり私たちが利用する Google のすべてのサービスも、Google の社内で使われているツールもすべて、すで

に Google では Docker のようなコンテナ型仮想化技術の上で実行されているということのようです。

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「We start over 2billion containers per week.」(私たちは毎週 20億個以上のコンテナを起動して

いる)とも書いてあり、Google 内部ではすさまじい数のコンテナが実稼働していることになります。

Google がクラウドの技術において私たちに数年先行しているのだとすれば、数年後のクラウドではコンテナ型仮

想化がインフラに組み込まれていることが当たり前になっているのかもしれません。

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事務局後記:海水をジェット燃料に!米海軍は常識を覆せるか?

米海軍の研究所は海水から作られたジェット燃料を注入したラジコン機のテスト飛行が成功したこ

とを公表した。もし本物の飛行機に実用可能な燃料と確認されれば、これまでのエネルギーの常識

を覆す革命的技術となる。

もし海水が燃料になったとしたら? その燃料を入れた飛行機は海の近くを飛行する限り、海水か

ら変換した燃料が供給されながら飛び続けることができる。

その可能性探る研究が米海軍研究所で続けられている。具体的には、海水から二酸化炭素(CO2)

と水素(H2)を抽出する方法である。

燃料となる液化炭化水素は、二酸化炭素と水素を原料として米海軍研究所の GTL(GAS:気体 to:

から LIQUID:液体 へ変換する)プロセスを利用して製造する。

今回同研究所が公開したのは、その燃料を動力源としてラジコン飛行機を飛ばすデモンストレーシ

ョンが成功したニュースである。

米海軍研究所は海水に含まれる二酸化炭素から 92%の効率でジェット燃料のもととなる炭化水素

(C9-C16)を取り出すと同時に水素を生みだす技術を公表している。この炭化水素(C9-C16)

を再構成して石油の替わりとなるジェット燃料を生成する。

二酸化炭素は空気中にも、海中にも豊富に含まれている。海中には空中の 140 倍の濃度で含まれ

ていることが、この研究が海水からジェット燃料を取り出せる理由のひとつだ。

コメントには、「これは驚きだ!」(米国)、「画期的な技術転換!」(インド)、「米国の(対

外)エネルギー依存度を低下させる大きな一歩!」(ブラジル)など賞賛するものが見られる。

また、新しいジェット燃料の将来性に対し、「未来は石油掘削装置に替わり、海水を燃料に変換す

る設備になる」(不明)との具体的な姿を描くコメントがある一方、「7~10 年先になるだろうが、

有望(なエネルギー資源)だ」(カナダ)と、時間がかかるものの期待できるとするコメントがあ

る。逆に、「さしあたっては……(実用化はこれから)」(パキスタン)と、まだまだ先が長いと

冷めたコメントも。

さらに、〈確かに!〉と思えるコメントとして、「この動画のラジコンは、ジェットではなくプロ

ペラじゃない?」(米国)と、ジェット燃料を海水から生成することを目標としているのにラジコ

ンのテスト飛行をプロペラ機で実施することへの疑問が発せられている。

そして、「燃料としての炭化水素よりも、汚染のない自然エネルギーに向かうべきでは?」(不明)

とのコメントは、新しいエネルギーの研究には長い道のりが必要であることが示唆されている。

参照記事:キーマンズネット

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「CUPA・Café」のご案内

下記の日時で「第 21回 CUPA・Café」を公開撮影いたします。

日時:2014年 6月 18日(水)15:00~15:45

会場:東京ビッグサイト (クラウドコミュニティ 2014内)

住所:東京都江東区有明3-11-1

アクセス:http://www.bigsight.jp/access/transportation/

※今回はクラウドコミュニティ 2014(6/18~20 http://www.cloudshow.jp)での開催となりますため、ライ

ブ配信は行わず後日録画にて配信いたします。

6月のテーマ:クラウドサービス活用の実態~現場をよく知る 3人のプロに聞く~

モデレータ: CUPA運営委員 江尻 高宏 様(株式会社シンカ 代表取締役)

パネラー:斉藤 芳宜 様(株式会社船井総合研究所 チーフ経営コンサルタント)

入江 恭広 様(株式会社アイエンター 代表取締役)

富山 孝治 様(株式会社システムフォレスト 代表取締役社長)

詳細:http://www.cloudshow.jp/seminar.html#0618-6

※今回は公開撮影となりますので、ご希望のかたは上記詳細ページ右下の『セミナー聴講希望の方はこちら』

ボタンからご登録をお願いいたします。その他もクラウドコミュニティ 2014は有益なブース・セミナーが目白押しです

ので、ぜひご来場下さい!来場登録はこちらから⇒http://www.cloudshow.jp

◆CUPA・Café詳細は CUPA の facebook ページでもご案内いたします。

http://www.facebook.com/cupa.jp

◆一般の方は USTREAMで後日視聴いただけます。

・CUPA・Café アーカイブ:http://cloud.or.jp/cupa_cafe.html

本企画では「対談者」や「対談テーマ」を募集しています。

下記のアドレスまでご要望を送信ください。

CUPA事務局

[email protected]

Page 17: クラウド利用促進機構(CUPA) - CUPA レポートらRackSpaceはオブジェクトストレージの重要性を認識して、開発を進めていたのである。Amazon

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★★★ CUPAの活動は以下の会員企業様に支えられています ★★★ (敬称略・五十音順)

【正会員】

株式会社 IDC フロンティア アイレット株式会社

株式会社あくしゅ 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社

NEC ビッグローブ株式会社 NTT コミュニケーションズ株式会社

株式会社 NTT データ クリエーションライン株式会社

株式会社 KDDI ウェブコミュニケーションズ 建通エンジニアリング株式会社

さくらインターネット株式会社 株式会社シーイーシー

シトリックス・システムズ・ジャパン株式会社 シグマコンサルティング株式会社

GMO クラウド株式会社 SecureSmart 株式会社

ソフトバンクテレコム株式会社 株式会社データホテル

株式会社電通国際情報サービス ニフティ株式会社

日通システム株式会社 日本ストラタステクノロジー株式会社

日本ヒューレット・パッカード株式会社 株式会社日立システムズ

freee 株式会社 株式会社ブロードバンドタワー

ホワイトポイント株式会社 株式会社ミドクラ

【団体会員】

特定非営利活動法人 AIP 一般社団法人中部産業連盟

特定非営利活動法人日本情報技術取引所


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